世襲は悪か

自民党議員の世襲が問題になっている。
議員の後継候補が子息になる例が後を絶たないという。
なぜ政治家は自分の子供に自分の仕事を継がせたいのか。
政治家ほど個人の能力が問われる仕事はないだろう。
誰がやっても同じではないはずである。親子とはいえ所詮は別人である。
本来世襲というものがあまり馴染まない仕事かもしれない。

それでは商売における世襲はどうか?
商売の場合は家業であり、家族が代々築いてきたノウハウを繋いで行くものであり、
世襲が子孫繁栄をもたらすものと考えられてきた。
子供たちは暗黙の了解で父の背中を追いかけ、商売を継いで当たり前と思っていたし、
周囲からもそれを期待されていた。
それが、世間から見れば楽をしているように見られるかもしれないのだが。

しかし、実際に後を継いでみると精神的にも肉体的にも大変である。
親の頃とは時代も変わり、後継者は生き残りに必死である。
その中で、会社が倒産してしまった知人もたくさんいる。
それらの多くはまじめな努力家である。浮かれて放漫経営したものなど殆どいない。
そんな厳しい経営環境の中で、親は安易に子供に事業継承を託せない時代である。

子供が親の職業に憧れるのは何も政治家や経営者だけではない。
どのような職業であれ子供が最初に興味を持つのが親の仕事ではないだろうか?
実際に親と同じ職業を選択した人はたくさんいる。子供は世襲という感覚が無く親の職業に興味を持つのだと思う。

不況とは言え、今の日本は豊かである。
人は安定を求め、起業をしたり、国のために身を尽くす人が少なくなってきている。
口先ばかりの人間が増えている中、たとえ親の七光りであろうと、
「なりたい」と思って行動を起こす人は貴重である。
一所懸命生きてきた親なら、その気持ちは嬉しいだろうし、チャンスを与えたいと考えるのは自然ではないだろうか?
しかし、その資質があるかどうかの判断に私情をはさんではいけない。
なぜなら、その決断が国民や社員の人生を左右するからである。

 

吉澤 比佐志

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