青い目のご近所さん

 私の自宅の近くに、ロシア人の家族が暮らしている。朝のゴミ出しの時にご主人と会うと、どちらからともなく挨拶をするという関係だが、先日玄関の落ち葉を掃除していると、「すみません、失礼ですがバスケットボールのゴールは今使っていますか?もしも使っていなかったら、お金はお支払いしますので譲っていただけますか?」と流暢な日本語で問いかけてきた。聞くと地元の小学校に通う息子がバスケットボールのクラブチームに入ったので、練習させたいとの事だった。譲って欲しいと言われたゴールは娘がミニバスを始めた時に買ったもので、もう使っておらず少々くたびれており、お金を頂くような代物ではない。そこで、お譲りするので家までお持ちくださいと言ったところ、道をゴロゴロ引っ張り引き取って行かれた。普段は「おはようございます」や「こんにちは」以外の会話をしたことがないのだが、話すと人懐っこく笑顔の優しい人だということがわかった。そして何よりも礼儀正しいのに感心した。
 そんなことが有った数日後、家のインターホンが鳴った。モニターを見るとそのご近所さんと息子の姿が映っている。何事かと思って玄関のドアを開けると、「先日は有難うございました。」とお菓子の入った袋を差し出された。息子と一緒にお礼に来たのだと言う。息子は今日もゴールで練習して汗を流したそうで、彼もしっかりお礼を言ってくれた。
 譲ったゴールは決して綺麗なものではなく、お礼を頂くほどの価値など無い。しかしそれに対する感謝の気持ちを示してもらったことが何とも嬉しかった。日本人なら「有難うございます。」で終わったかもしれない。
 今後日本にはもっと多くの外国人が住むようになるだろう。それは避けられないと思う。そんな時、外見やイメージだけで判断することなく、お互いを理解し合う姿勢が大切なのだと感じた。そんな出来事だった。

吉澤比佐志

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