20才大学生から学んだこと

今年の夏休みに、我が家でアメリカ人の学生のホームステイを受け入れた。シアトル生まれのモンゴル系アメリカ人で、現在名門イエール大学で経済学を専攻する20才、9月から3年生になる優秀な男子学生である。ホームステイを受け入れた経験はなかったが、家内が学生時代にアメリカでしたホームステイがとても楽しい経験だったことから、受け入れてみようという事になった。コミュニケーションについては、前の仕事で英語を頻繁に使っていたのでさほど不安は無かったが、思いの外錆び付いていた。しかし、シャワーのように英語を使うチャンスも今の生活ではそうそうないので、頑張ってたくさん話をした。

その結果、自分が持っていたアメリカの高校生や大学生のイメージが何ともステレオタイプの先入観に満ち溢れたものであることを思い知った。まずアメリカの高校生はほとんど勉強をせず、楽しい学校生活を楽しんでいると思っていた。ところが、彼の通っていたシアトルの私立高校は学生がとても真剣に勉強し、彼も3年生になりたての頃に受けたSATというアメリカのセンター試験のようなもので早々トップクラスの大学に行ける成績を取り、3年生の後半は学業成績と同様に大学から要求されるボランティア活動に励み、その結果無事にイエール大学に合格できたとの事だ。彼の高校の卒業生にはビル・ゲイツがおり、在校生はマイクロソフトやアマゾンで働く親を持つ子供が多く、勉強へのモチベーションもかなり高いそうだ。

また、アメリカ人はトランプではないが、アメリカ第一で、外国には興味の無い人が殆どと思っていたが、彼は高校卒業時から毎年海外でのホームステイを経験しており、高校時代には中国語を履修して、初めてのホームステイ先は、庭で鶏が走り回るような中国の片田舎の家だったそうだ。大学入学後はイエールのプログラムを利用して、日本、ドイツ、イギリスに、短期留学とホームステイを毎年繰り返しているとの事で、そのバイタリティーに満ちた話はワクワクするものばかりで、老け込んでいる場合ではないと心底感じた。

そして、思った。アメリカはいまだに多くの分野で世界のトップリーダーだ。しかし、若者には自分の将来のキャリアの為に、国境を越え新しい知識を貪欲に吸収しようとする、フロンティアスピリットが今も健在なのだと。その一方、日本の若者にはそのバイタリティーが感じられなくなってきているように思う。

また始まったといわれそうだが、これは本当に憂慮すべきことだ。若者が安定に走る国に未来は無い。そんな事を思い知らせてくれた20才の若者は、来年日本への留学に挑戦するそうだ。「成功の暁には、必ず富山に戻ってきます。」と力強く握手をして、新幹線のホームに消えていった。気持ちが変わらなければ、また近い将来彼と会えるだろうと、後姿を見送りながら思った。

 

吉澤比佐志

お問い合わせ