人手不足の今考えるべきこと

最新の富山県の有効求人倍率は1.99倍となり、多くの企業は採用で苦労をしている。団塊の世代のリタイヤに加え、今後少子化が加速していく中で、この状況はますます深刻化していくことだろう。こうなることは何年も前からわかっていたことであるが、多くの企業やそこで働く人たちは他人事のように考えていたのかも知れない。そんな中、人手不足の解消方法として人工知能(AI)が注目されている。今後多くの仕事がAIに取って変わられることは間違いないと思う。そうは言っても、AIの導入には多額の費用が必要であり、システムの構築には専門的な知識や人材も必要であるため、短期間で人間をAIに変えていくことは容易ではない。

では、当面の人材不足をどうやって解決すればいいのだろうか?私は「協力」だと考える。例えば人材不足を抱えている企業で、上司は問題点を正確に把握し、部下に指示しているだろうか?それを部下が理解しその問題の解決のために社員同士が協力をして行動しているだろうか?社内のコミュニケーションは良好だろうか?これほど厳しい採用環境の中では、人手不足の解消は、生産性の向上以外には無い。これまで10人でやっていた仕事をいかに9人、8人と減らしていくかである。AIに頼る前に先ず行うべきことは、社員同士が力を結集し、互いに知恵を絞って生産性の向上を目指すことである。人材が豊富にある時代はもう終わって、人材を大切にし、活かすことを真剣に考える時代になったのである。

加えて、企業同士の協力の必要性も痛感する。例えば運送業界において、ドライバー不足はもっと深刻であり有効求人倍率は3倍を超えている。そして、ドライバーの大半が50歳以上であることを考えれば、今後車輌の供給が更に不足する事は免れない。弊社では一年を通して、求車の問い合わせが断つことが無くなった。加えて、政府の働き方改革で、運行回数に制限がかかり、車は奪い合いになるだろう。倍の運賃を払うと言われても、コンプライアンスに反する事はできないのが現状である。そんな中でも、全てのトラックが常に荷物を満載して走っているわけではない。現在ある車輌になるべく効率よく品物を積んで走る協力を荷主企業と運送会社はしなければならない。また、ドライバーの拘束時間の短縮のために、荷役作業の見直しも協力して行っていかなければならない。

かつて世界中のどの国も経験しなかった急激な人口減少と少子高齢化を経験する日本では、企業や立場の違いを超え、お互いの存在を尊重しあえる、成熟した協力体制の構築が不可欠である。その上で物流の在り方を共に模索しなくてはならないと思う。

 

吉澤 比佐志

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