素晴らしいスポーツマンシップ

先日の海外男子ゴルフメジャー「全米プロゴルフ選手権」は一打を争う大混戦になったが、最終18番ホールでスポーツマンシップの素晴らしさを痛感させられるシーンがあった。

大会当日は豪雨の為の中断により、最終組のロリー・マキロイがスタートしたのが午後4時19分、バックナインに入ったころから、少しずつ暗くなりホールアウトが出来るかどうかが微妙な状況となった。
1つ前の組のリッキー・ファウラー、フィル・ミケルソンとマキロイの息を飲む接戦の中、18番ホールに2打リードのマキロイが到着した時、ファウラーとミケルソンはまだティーショットを打っていなかった。
マキロイはこの時「このまま待っていたらどんどん暗くなってしまう」と不安になったという。
ゴルフには日没サスペンデッドというルールがある。
暗くなってボールが見えなくなったら、その時点でプレーを終了し、翌日そこからプレーが始まるのである。
リードはしているが翌日に持ち越されれば、たった1ホールのプレイだけでも何が起こるかわからないとマキロイは不安になったのだ。

ここで、ティーショットを打ち終わったファウラーから「合図をしたら君はティーショットを打ってくれ」と告げられたそうだ。

進行を早めるために、彼らが2打目を打つ前にマキロイにティーショットを打たせたのである。
合図のホーンが鳴ったら、プレーは翌日に持ち越される。
ファウラーは、ティーショットさえ打てば、ホールアウト(最後まで終了)が許されることを知って、マキロイに打たせたのだという。
その上18番のグリーン上ではファウラーのイーグルパット、ミケルソンの3打目のアプローチを残したままプレーを止めて視界のあるうちに、マキロイに2打目を打たせた。

その結果マキロイは最終ホールをパーで上がり優勝し、ミケルソンは1打差の2位、ファウラーは2打差の3位タイとなった。
ファウラーとミケルソンのスポーツマンシップが無ければ、僅か1打差の争いの結果は変わっていたかもしれない。

マキロイは「彼らの品位や人格をよく表していた行動だった。2人のすばらしいスポーツマンシップに感謝したくて、優勝スピーチで何回も(感謝の言葉を)繰り返したんだ。」
と語っている。

マキロイやファウラーは25才の血気盛んな若者である。
プロである彼らは勝ちたい気持ちは人一倍強いと思う。
勿論勝つことは重要だし、ズルをしても勝つことが全てという人もいるだろう。
しかし、それ以上に人としての本当の強さは何かという事を教えられたような気がする。
これぞプロフェッショナルである。

 

吉澤 比佐志

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