変わるという事

北陸新幹線が開通して9か月が経過した。富山駅周辺は連休ともなると、観光客と思しき人たちの姿を見かけるようになったが、金沢の街の賑わい振りとは比較にならない。その繁盛ぶりを目の当たりにすると、人が増えたはずの富山の街が寂れて見える。

勿論金沢の観光地としての魅力は北陸でも際立っているが、それ以上にこの100年に一度のチャンスをいかに生かすかという取り組みに対する思いの違いは確実にあったと思う。新幹線が来て、それに乗ってくる人たちが増えたら、街をどう変えて行くのか、その為に自分たちは何をしなければいけないのか?という事を徹底的に追及したのでは無かろうか。それは駅周辺の整備にも如実に表れている。金沢駅は新幹線の開通前にきっちりと完成した。その結果、金沢駅は世界で最も美しい駅14選に選ばれた。正面の鼓門は圧巻であり、観光客はその迫力に圧倒され、旅行気分は高まる。一方富山駅と言えば、正面は未だに何ができるのかもわからないまま工事が行われており、観光バス乗り場がある北側には新幹線の出口が無く、地下道を通らなければならない。地下道を利用するには小さなエレベーター以外の昇降手段がなく、大きな鞄を引きずりながら階段を昇り降りする観光客を見ると申し訳なく思う。もし自分がその立場なら、旅の楽しい気分はちょっと萎えるだろう。行政批判をするつもりは毛頭無い。きっと、想定外の事が多くあったのだろう。今まで通りの考え方、やり方では通用しない事が次々起きて気が付いてみたら、後手に回っていたのだと思う。駅整備という目に見える成果の評価をされる立場の人たちはつらいと思う。しかしこの違いは、金沢の関係者に新しいものを創造するためには、自らが変わらなければならないという強い意志が有ったのだと思う。絶対にいい街を作ろうという思いと極上のおもてなしをしたいという心が。

物流の現場でも似たようなことはある。生産性や品質が悪く、弊社にアウトソーシングの相談があり、検証の結果、品質も生産性も改善しコストダウンも可能であるとお伝えしても、導入に二の足を踏むケースである。殆どの場合、現場の責任者が社内を説得し切れない。アウトソーシングという手法に馴染みが無いのか、富山県トラックが不安なのかはわからない。勿体無いなと思いながらも、お客様が判断される事なのでそれを受け入れるしかない。変える事の難しさを痛感するが、それを実行しなければ後の世代につけを残す事は明白である。変えない方が楽ではあるがその代償は計り知れない。我々も他人事と思わず、常に変化に対応し最高の物流を提供する企業になるという目標の手綱を緩めてはいけないと改めて思う。

末筆となりましたが、今年も僅かになりました。来年も失敗を恐れず、お客様に必要とされる会社になる為、社員一丸となって頑張って参ります。今後共宜しくお願い致します。

 

吉澤 比佐志

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