高齢者の交通事故について思う
昨年の富山県の交通事故の死亡者数は70人で前年の44人を大きく上回り、前年比で59%増となる急激な増加を見た。増加数で大阪に次いで全国2位、増加率では断トツの全国1位という不名誉な結果となった。特筆すべきは高齢者の死亡者数であり、70人中実に52人が65才以上の高齢者で、前年の24人から倍以上の増加となった。そして、この傾向は今年に入ってからも変わる事が無く、今月9日までの死亡者は7人(昨年5人)でうち高齢者が5人(昨年3人)となっている。残念ながら今朝のニュースで、昨日発生した83才のお年寄りの死亡事故が報道されており、この数はさらに増えていると思われる。この事故の内容は、被害者が家の前の見通しの良い片側1車線の横断歩道を歩いて横断中に車にはねられたものである。因みに加害者は50代の男性のようだ。偶然その後、高齢者の事故に関する特集があり、様々な地域でお年寄り向けの交通安全教育を行っているが、事故防止になかなか結び付かない中で、死の危険を感じたお年寄りの経験談が印象的だった。その人は、以前だったら安全と判断して横断していた車との距離で、事故寸前の恐怖を体験している。その結果、交通法規を遵守するようになったのだと言う。つまり、体の老化を自覚していなかった為の危機である。確かに無理な横断をしてくる高齢者は多い、運転する側は常に危険に対する心構えが必要である。また、被害者だけではなく、加害者としての高齢者の事故も増加している。認知症でありながら、家族の目を盗んで運転したり、ブレーキとアクセルを間違って操作したりして起こす事故が後を絶たない。NHKのクローズアップ現代の調べでは、「自分は事故を回避する自信がある」と答えた人は年代別で見ると、10代から60代前半までが10%台であるにもかかわらず、70才前半から急激に増え、実に70才後半の53%が自信があると答えている。これらの事実から言える事は、高齢者は実は自身の体の衰えを認識せずに、行動しているという事だ。富山県のような車社会では、高齢の運転者の比率が高い。その環境の中で事故を回避するためには、交通法規の遵守以上に危険予知が重要であり、それが同時にわが身を守る手段であると言える。この事はドライバーとのミーティングで常に確認し合っている。今後益々ドライバーの高齢化に拍車がかかる中で、公共交通機関の整備や、自動運転の車両の普及等の対策を進めて行かなくてはならないと思う。
吉澤 比佐志