富山県民は閉鎖的か?
去る7月5日、富山市の機械製作メーカー「不二越(ふじこし)」の本間会長が、中間決算発表の記者会見の場で、今後はロボット事業に力を入れ、全国や世界から広く人材を採用したいとした上で、「富山で生まれて地方の大学に行った人でも極力採らない」「(同県出身者は)閉鎖された考え方が非常に強い」との趣旨の発言をして、県内で物議を醸すこととなってしまった。富山県民としてみれば、かなりカチンとくる発言であると思う。
不二越と言えば、従業員の8割が富山県出身者であり、創業から90年近くもその人たちが支え続けてきた企業であることに、何ら異論はないところだろう。それを承知でこの発言に至った裏には、いろいろな事情が有ったものと思われる。確かに、私が学生・社会人を経験した東京は、開放的で多種多様な人材が存在し、個性的で柔軟な考え方を持った人が多かった。富山に戻って生活してみると、考え方は保守的であり、多様な価値観を受け入れるのは苦手であるようにも思える。富山を愛する私がそう思うのだから、東京出身の会長はきっと苦労されたのだと思う。無意識ではあるが、県外出身者に対して、たとえ長く富山に住んでいても、「旅の人」等と表現する事を、呼ばれた本人たちは言いようのない違和感を持ち、「閉鎖的」と感じているかもしれない。
ただ、これは富山だけではなく、地方に行けばそれぞれの土地で考え方や価値観は違い、受け入れにくいものがあると思う。しかし、違うから悪いという事にはならないし、その土地で生活するためには否定するのではなく、受け入れる事から始まると思う。
今回このような場で、富山県民が不快に思うような発言が有ったことは、とても残念だと思う。「こうすれば、もっと富山はもっと良くなる」という事を県外出身者の目で語ってもらえれば、きっとお互いの為になったと思う。こんな形で富山県と本間会長の関係が終わるのはとても残念だ。一方、富山の人たちには、この発言を感情的に非難するのではなく、真摯に受け止める懐の深さを期待したい。そして、決して富山県民は閉鎖的でない事を証明してもらいたい。
吉澤 比佐志