今年の冬は
10月に入り、夏の猛暑の記憶が不確かになるほど涼しくなってきた。そんな中、運送業界を取り巻く環境は例年になく先行きの予測が難しくなっている。今年は7月に発生した西日本豪雨の影響でJRが不通になり、コンテナ輸送が寸断され、トラックによる輸送に頼らざるを得なくなった為、トラックの供給がタイトになった。弊社でもお客様の要請で九州方面の輸送に対応した為、車のやり繰りに影響が出た。しかし、これは鉄道の復旧を待てば、解消されると考えていた。しかし、輸送網が正常化された今、車の需要は一向に解消される気配が無い。通常は12月に入ってから急激に増える引き合いが今年は既に始まっており、連日新規の企業からの求車の問い合わせが続いている。取引先の荷主企業では、毎日10台以上の車が足らず、対応に困っていると聞く。大幅な運賃値上げを実行し、サーチャージを導入した企業が、である。これから一体どんな年末を迎えるのか、全く予断を許さない状況と言える。ただ、物流業者として言えるのは、車の供給力は今後増える要素が全くないという事だ。その根拠は、ドライバーは高齢化しており、若手の求職が極端に減っている事。働き方改革で、残業時間が制限され、運行回数を減らさなくてはいけない事などが挙げられる。加えて上昇が続く軽油価格、ドライバーの労働時間短縮のための有料道路の使用などにより、利益が圧迫されていること、ドライバー不足による業務拡大が容易でない事で、経営者は増車に対して消極的になっている。それでは今何ができるのか?それは、荷主と運送業者が、限られた車を如何に有効に運用するか共に考えるという事である。現状で輸送業者は荷主の要求通りの車種・納期を実現する事は難しい。また、車を供給できても、受注をギリギリまで延ばし、ドライバーを長時間拘束するような仕事は、働き方改革によって運送業者は対応できなくなる。受注・生産・出荷を平準化することにより、輸送量を平準化する事を荷主と輸送業者が真剣に話し合う事が避けられない。ここに来て、荷主サイドからもかなり理解が得られるようになってきている。12月になって一層の混乱が予想される今、即実行すべき課題である。 吉澤 比佐志